アフタヌーンティ

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 このブログはタイトルが「コーヒーで始まり、ドライマティニで締めくくる心豊かな一日」となっていますが、私は紅茶を飲まないわけではありません。

 というよりも、紅茶をよく飲みます。

 

 朝一番で起き抜けに飲むのはコーヒーですが、朝食時に飲んでいるのは紅茶であり、外出の際、昼食時にアイスティーを注文することもよくあります。

 

 ヨットで外洋を走っている時、寒い夜間の当直時に飲む熱い紅茶というのも捨てがたいものがあります。

 

 コーヒーについては、若い頃に船で世界一周の航海をした際にもよく飲んでいたので、世界中でコーヒーを飲んだと言っても嘘ではありませんが、紅茶も世界中で飲んできました。船の士官室のコーヒーが、いつも煮詰まっておそろしく不味いものだったので、淹れたての時には飲んでいましたが、そうでないときには自分で紅茶を煎れて飲んでいたのです。

 

 寄港地でもよく飲みました。忘れられない紅茶が三杯あります。

 一杯はどこで飲んだか内緒ですが、イギリスのポーツマス入港中に訪れたある場所です。先方の名誉を守るため、インターネット上で公表は控えさせて頂きます。

 どうしても知りたい方は、直接お目にかかった時に教えて差し上げます。

 

 もう一杯もポーツマスでしたが、これは英国海軍の航空救難隊の基地でした。

 希望して見学に行ったのが、雨の降る寒い日で、基地に到着したところ搭乗員待機室に通され、そこで出てきたのが紅茶でした。

 目の前にある達磨ストーブの上に載せられたやたら大きなブリキの薬缶に、無造作に大きなティーバッグが投げ込まれてグラグラと煮られ、しばらく経ったところを、ちょっと縁の欠けたこれも大きなマグカップにドブドブと注がれ、間髪を入れずに、昔の牛乳の一合瓶のような容器からミルクが注ぎ込まれ、「ホイッ」という感じで手渡されたのです。

 外の寒さに参っていた私の喉を焼けるように熱いミルクティーが通っていったあの感覚をいまだに忘れることができません。

 

 もう一杯は、スリランカに入港した時のことです。この地のゴール・フェイス・ホテルは首都コロンボの海に面した植民地時代の名残を十分に残した立派なホテルですが、このホテルの中庭のオープンカフェで飲んだ紅茶です。

 さすがに本場の紅茶というのはこういうものかと思うものではありましたが、むしろ同期生と私の二人が制服を着ていたので、ただの新米海軍士官であるにもかかわらず、凄まじいもてなしをされてうろたえた想い出の方が強い紅茶です。

 

 とにかく、いろいろなところで、いろいろな紅茶を飲みましたが、一昨年、もう一つの想い出ができました。

 

 3年前までカリフォルニアにある米国法人の取締役として勤務しておりましたが、帰国が決まったある日、連休を利用して家内と二人でバンクーバーに出かけました。

 私たちが住んでいたのは南カリフォルニアでしたので、サンディエゴからバンクーバーまで飛行機で飛び、空港でレンタカーを借りてバンクーバー市街へ向かいました。

 翌日、今度は車をフェリーに載せ、ビクトリアへ上陸し、フェアモント・エンプレス・ホテルにチェックインしました。

 

 このホテルはビクトリアのインナーハーバーを見渡せる由緒あるホテルで、古き良き英国の風情を味わうことができます。

 このホテル内にある特別なロビーでアフタヌーンティーが供されており、私たちのお目当てはこれでした。

 

 多分、ドレスコードが煩いだろうなと思ったので、予約する際に聞いてみたのですが、上着を着てこいというだけで、特に面倒なものではありませんでした。しかし、よく考えると紅茶を飲むのに上着がいるというのも大変なことです。

 

 中庭を見渡すことのできるテーブルに案内され、黒いジャケットに蝶ネクタイをした年配のウェイターが三段重ねのティースタンドに載せられた軽食とティーカップ、ポットを持ってきてくれ、紅茶について丁寧に説明をしてくれます。

 どんな質問にも、丁寧に答えてくれるのですが、ハイティーだのイレブンシスだのと言われているうちに混乱してきて、よくわからなくなります。

 

 軽食は、イギリス流のキュウリのサンドイッチ、スコーン、小さなケーキ、カットフルーツなどです。

 英国式なので、滋味を期待するしかなく、素朴さを楽しむつもりで行かないとがっかりするかもしれませんが、私は意外にこれが嫌いではありません。

 庭などもフランス式のシンメトリックな圧倒的な人工美を誇るものよりもイングリッシュガーデンの方が性に合っています。

 いずれにせよ、びっくりするほど美味しいというものでもありませんが、雰囲気だけは抜群の紅茶です。

 もっとも私がこれまでに経験した紅茶の中では最も高額な紅茶だったことも間違いなく、たしか一人60ドルくらいチャージされていたと思います。チップ代だけでも、日本のホテルのカフェで紅茶を飲めそうな金額でした。

 

 日本国内にもアフタヌーンティを楽しませてくれる店が沢山あるようです。私の地元、鎌倉にも何軒かあるようですので、順番に行ってみようかと思っています。

 

 そのうちにこのメールマガジンのサブタイトルが「コーヒーで始まり、合間に紅茶を楽しみ、ドライマティニで締めくくる・・」というものに変わっているかもしれません。皆様ご注意ください。