グルメ?

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 個人的な趣味で申し訳ありませんが、私はテレビの食べ物に関する番組が好きではありません。

 食べ物に関する番組と言ってもいろいろありますが、なかでも好きではないのが「大食い選手権」の類で、世界にはお腹一杯食べることのできない人々の方が圧倒的に多い中で、飢餓で苦しむ人々がこの類の番組を観たらどう思うかと考えると胸が痛みます。

 

 人気のラーメン店などを紹介する番組もあまり好きではありません。

 雑誌などを見ていると、普通のビジネスマンで、年間500食くらいラーメンを食べて評論家になっている人がいますが、これは一日一食ではできないことなので、他の追従を許さないことは否定しませんが、食に関する感覚が壊れているのだろうと推察しています。

 

 ミシュランのガイドも好きではありません。なぜなら、その評価が個人の好みだからです。

 

 料理の番組も好きではありません。

 私は調理師の資格を持っていますが、料理番組を観ていても、何もわざわざ手をかけて食材を不味くすることはないだろうにといつも思いながら観ています。

 

 なぜ私がこのように苦手意識を持ち、かつ、ミシュランのガイドがいい加減だなどと乱暴なことを言うのか疑問に思われる方も多いかと思います。

 

 それは私が料理の評価は主観的・相対的なものであり、絶対的な基準があるわけではないと信じているからです。ミシュランのガイドは、飽食した調査員の主観的な評価に過ぎません。かつて、これまでに私が最も美味しいと感じた食べ物の話を書いたことがあります。

「おいしい料理の記憶:グルメとは何だろう」

https://www.aegis-cms.com/entry/2018/12/31/132039 

 

 これはどちらもヨットで食べた想い出ですが、一方は大時化の中で飲んだインスタントラーメンのスープ、もう一方はベタ凪で半日動けずにいた三宅島沖の炎天下で、通りすがりの漁師が作ってくれたナメロウのようなものに砕いた氷を混ぜてご飯にかけただけのものです。

 

 もともと、屋外のBBQやキャンプなどでは、何を作っても美味しいのです。不思議なのですが、買ってきてそのまま食べることができるものは、普段家庭で食べてうまいと思うものでも、キャンプの時などは美味しくありません。

 しかし、素材からその場で料理したものであれば、ほんのひと手間であっても美味しく食べられるのが野外料理です。

 私が最も好きなのは、1キロくらいの牛肉のブロックを木の枝に刺し、表面に塩を塗り付けながら炙る、いわゆるシュラスコです。これとバーボンやフルボディのワインは黄金の組合わせだと思っています。

 

 かつて、先輩の陸上自衛官から聞いたことがあるのですが、彼がその人生で最も美味いと思っている食事は、ある演習中に食べたものだそうです。

 孤立して2日間補給が無く、3日目に携行していた装備品用の消耗品の箱に紛れ込んでいたレトルトのごはんとマヨネーズを見つけ、熱いごはんにそのマヨネーズをかけたものを小隊員全員で分けたのだそうです。各自スプーン2杯分ずつだったそうですが、その味が忘れられないと言って、目を潤ませていました。

 

 つまり、ミシュランガイドやその他のグルメ番組で紹介されるレストランなどは、大都会の何を食べても美味しくない極めて不利な環境において、どれだけ手間暇をかければ食べられるようになるのかという問題に過ぎず、海の真っ只中の小船や、人里離れた山の中というような手間暇を掛けなくとも美味しい料理にありつける贅沢な環境に比べれば、取るに足らないことだと思うのです。

 

 寿司などは、漁村で漁師のおかみさんが握ってくれるのが文句なく最上の味ですが、これを銀座や新宿で美味しく食べることが出来るようにするには、磨き抜かれたプロの職人の技が必要になります。要するにレストランガイドなどは、そのようなレベルの話をしているのに過ぎず、私にはあまり興味がありません。

 

 海で釣りをできない環境にいれば、釣り堀で我慢せざるを得ないのだろうな、という思いです。