臨機応変の処置

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 私の住んでいる鎌倉には神社仏閣がたくさんありますが、キリスト教の教会や修道院、またミッション系の学校、病院なども意外にたくさんあります。

 

 私の家の近くにも教会があり、散歩する道沿いに修道院や学校が建っていて、シスターが歩いているのをよく見かけます。

 

 私は母方の祖父が曹洞宗の僧侶だったのですが、私自身はキリスト教の方に縁が深く、生まれたのはミッション系のシスターが看護師さんの病院でしたし、幼稚園もミッション系の幼稚園だったので、土曜日が休みで、日曜日の朝は幼稚園に礼拝に行くという生活でした。

 中学・高校はその頃は極めて珍しかった全寮制の学校で、ミッション系ではありませんでしたが、大学はローマカトリック教会が経営する大学であり、そのまま進学した大学院の指導教授は神父でした。

 

 大学院を修了して海上自衛隊に入隊し、幹部候補生の時に婚約したので、休暇の時に結婚の挨拶に指導教授のところに行ったら、あっさりと「僕が司祭をやってあげる。」と言われてしまい、家内は日本髪を結うことなくウェディングドレスを着ることになり、私も羽織袴ではなく礼装用の制服に身を包んだ結婚式となりました。

 

 曹洞宗の僧侶であった母方の祖父も、実は私の母校の大先輩で、カトリックの大学で何を勉強していたのかと言えば、インド哲学を勉強していたのだそうです。

 

 しかし、私にはどうも宗教というものをどうとらえていいのか、いい年をしてまだよくわかっておらず、迷いの道から抜け出すのには、まだまだ時間がかかりそうです。

 

 私たちが時々買い物に行く地元のスーパーマーケットの近くにも修道院があり、そこのシスターがそのスーパーマーケットで買い物をしているのを見かけることがあります。

 

 修道院の食生活がどのようなものなのかは知りませんが、想像するにかなり質素なものなのでしょう。何人分の食材を買っているのかわかりませんが、それほど大量の買い物をしているのを見たことがありません。

 微笑ましいのは、夕方、各商品の値引きが始まる頃に彼女たちが現れることで、しっかりと考え、世俗の仕組みを理解して行動しているなと思わされます。

 

 このスーパーマーケットの道路のはす向かいに駐車場が比較的ゆったりとした本屋があり、その駐車場とサーフショップを挟んで、細い道路が通っています。とても細い道路なのですが、バス通りに交差しているせいか、横断歩道があり、歩行者用の信号機も設置されています。

 私はこの細い道の横断歩道でも、信号が赤であると、まったく車が見当たらなくとも信号が変わるまで待つのですが、大方の人は、周りを見て、車がいないと平気で渡っていってしまいます。

 

 ある時、スーパーマーケットから出てきたシスターがこの横断歩道で赤信号になったところで一緒になりました。私は例によって車が来てもいないのに信号が変わるのを待っていたのですが、シスターが一度止まったのちに動き始めたので、「オヤッ」と思って見ていました。

 なんと彼女は、さすがに目の前の赤信号の横断歩道を渡ったのではなく、横断歩道から10メートルほど道沿いに横に歩いて行き、そこでヒョイと道を渡ったのです。

 たしかに横断歩道の信号を無視したわけではなく、むしろ横断歩道のないところを渡っているのですから、道路交通法上は保護されなければならない横断者になるわけです。

 神様もお許しになる行いなのでしょう。見ていて、思わず笑ってしまいました。

 

 臨機応変の措置というのは、こういうことを言うのではないかと、私自身の融通の利かない道の渡り方をちょっと考えなおしたりしました。

 

 (ただし、やはり安全とは言い難いので、このブログを読んでいる良い子の皆さんは近くに横断歩道がある時は、そこを渡りましょうね。)